社会人としての常識と“考える力”を身に着けるために
自社の研修に合わせてテキストをフレキシブルに活用
総合ITサービス企業・TISは、例年200名前後の新卒者を採用。内定期間中は「内定者研修」を複数回実施するというが、その際に「フレッシャーズ・コース」をテキストの一つして導入している。今回は、そんなTISの人事本部・人材開発部の田口愛味子さんに、「フレッシャーズ・コース」の活用方法について詳しくお話を伺った。
TIS株式会社 人事本部 人材開発部 上級主任 田口愛味子さん
――まずは、TISの新卒の採用状況や、選考の流れなどを教えてください。
田口 弊社では、毎年200名前後の新卒者を採用していますが、2020年度は当初の予定を大幅に上回る約300名の新卒者が内定し、この4月から新たな仲間として加わります。採用までの流れは、ごくごく一般的なステップですが、まず会社説明会にエントリーしていただいて、それから適性検査を実施。その後、1対1の個人面談、最後に役員面談を経て、内定に至ります。
――売り手市場とも採用難とも言われる時代に、採用予定人数を大幅に上回る内定者が集まったというのは、すごいことですね。
田口 たしかに、他社の内定を複数持っている内定者も少なくありませんでしたし、売り手市場のムードは実感しています。そんな中でも、なるべく良い人材に来ていただくことが、我々の採用活動における課題です。
――人材確保のために、何か取り組まれていることはありますか?
田口 就活生のみなさんに向けては、インターンシップ制度を設けています。また、弊社の社員には、会社のファンになってもらって、長く働いてもらうことを理想としており、その実現に向けてさまざまな取り組みを行っています。たとえば、人材開発部ではキャリア・教育制度に力を入れており、「複線型職種制度」と「実力主義」をベースに、人材を育成しています。複線型職種制度とは、中長期的な視点で、多様なプロフェッショナルを育成することを目的としたもので、それぞれの職務ごとに職種を設定し、職種グレード別に必要な役割・職責を細かく定義しています。一方の実力主義とは、短期的に目標を達成する力だけでなく、中長期で力を発揮できる人材の“実力”を認める評価軸の採用を意味しています。こうした仕組みや評価軸を取り入れることによって、社員一人ひとりが、未来の「なりたい自分」を意識したキャリアパスを描くサポートをしています。
[参考] TIS株式会社(キャリア・教育制度)
――どんなキャリアを築いていくのか、会社のお膳立てで決められたことをただ受け入れるのではなく、自分で考えてもらうことが大前提なのですね。
田口 これまでは、会社が敷いたレールに乗っかって、先輩の背中を追いかけながら進んでいくだけでも十分だったかもしれません。ですが、目まぐるしい環境変化の中で、会社に存在していない新規事業を立ち上げたり、先輩のいない分野の専門家になろうと試みたりする力や熱意も、会社にとって欠かせないものであるはずです。そうした力・熱意を持つ人材を育成するためにも、すべての社員に、自分自身のキャリアパスを折に触れて見つめ直してもらう体制作りが重要だと認識しています。
――話を戻しますが、TISの内定者に共通する特徴はありますか?
田口 弊社は、責任感と協調性があり何事も自分の頭で考えることができる人材を求めているので、必然的にそれが内定者の共通項にもなっています。社会人として責任感が重要なのは当然のことですが、それに加えて、仕事の多くは、チームでプロジェクトを進めるため、協調性も求められます。それから、先ほども申し上げたように、今は自分自身のキャリアの道筋を自分で考えていくことが求められますので、“考える力”というのは重視していますね。
――内定期間中に、研修などは行われていますか?
田口 内定後、内定者一人ひとりの個別面談、交流を兼ねたキックオフミーティング、内定式を経て、実際に入社するまでの間に、何度か内定者研修を行っています。研修はディスカッションなどのグループワークのほか、入社までに取得を推奨している基本情報技術者試験(FE)の対策講座を実施します。内定者には、キックオフミーティングの際に「フレッシャーズ・コース」を配布しています。自習課題としてだけでなく、グループワークのテキストとしても活用しています。
――「フレッシャーズ・コース」は7巻に分かれていて、「働くことの意味」「社会人としての常識力」「コミュニケーション」「社会人としての自己管理」「働く技術 自分の頭で考える力」「会社の仕組み・仕事の仕組み」「ビジネスマナーハンドブック」という構成になっていますが、グループワークではこれらをどのように活用されているのでしょうか。
田口 「フレッシャーズ・コース」は基本的に1巻から順に読み進めていくものだと思いますが、分冊になっていて、途中からでも違和感なく読めるので、弊社ではその時々のグループワークのテーマに合わせて、適宜テキストの順序を入れ替えながら活用しています。たとえば、先日も内定者を集めてグループワークを行いましたが、そのときは「フレッシャーズ・コース」の1巻と4巻を使用しました。使うところだけ切り離して持ち運べる体裁になっているところも便利です。グループワークに際しては、あらかじめ事前にテキストを読んできてもらい、「コミュニケーション・ペーパー」も先に提出してもらっています。「コミュニケーション・ペーパー」は紙の状態で提出するのではなく、内定者向けのウェブサイトで回答してもらい、それを我々がチェックしています。
※「コミュニケーション・ペーパー」⇒内定者と人事担当者とのコミュニケーションツール。「フレッシャーズ・コース」の6巻まであるテキストに対応しており、各巻の内容を踏まえた質問が設定されている。内定者は、そこに自分の考えをまとめて記入⇒人事担当者に提出するというのが、ベーシックな活用方法。
――グループワークでは、どのようなことをしているのでしょうか。
田口 直近のグループワークでは、「時間管理」をテーマにディスカッションしてもらいました。「フレッシャーズ・コース」の4巻に出てきたトピックですね。たとえば、自分だったらこんな時間管理ができそう、とか、こんなやり方も考えられるね、といったことを内定者同士で話し合い、発表してもらう形式をとりました。事前に「コミュニケーション・ペーパー」に回答することで、各自の意識が高まっていて、短い時間の中でも多様な観点を共有することができたと思います。毎回、このようなディスカッションで自分たちの考えを深める機会を設けています。「フレッシャーズ・コース」で取り上げているテーマは、社会人が知っておくべき基本的な内容であり、「コミュニケーション・ペーパー」の質問項目は、シンプルながら頭を使わないと答えられないようなもの。グループワークにこれらを活用することで、社会人の常識を学びつつ、弊社の重視する“考える力”を少しでも鍛えることを目指しています。
――人材の育成に力を注がれている御社では、内定者研修の時点から先々を見据えたカリキュラムを組まれていて、人を大切に考えている会社だということが伝わってきました。本日はご協力ありがとうございました。