思わず読みたくなるコミュニケーション・ペーパー
内定者コメントの冊子化で、同期からの気づき誘発

成田空港と羽田空港で免税店の運営を行うJAL-DFSは、内定者とのコミュニケーションを大切にし、「コミュニケーション・ペーパー」のフィードバック方法がユニークであるという。今回は、そんなJAL-DFSの総務グループ長・林由希子さんと同グループ 人事チームの泉水恵皆子さんに「コミュニケーション・ペーパー」の活用方法についてお話を伺った。

 

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株式会社JAL-DFS
(右)総務部 総務グループ長 林由希子さん
(左)総務部 総務グループ 人事チーム 泉水恵皆子さん

 

――まずは、JAL-DFSの新卒の採用状況や、採用活動の概要などを教えてください。

 

泉水 弊社は成田空港と羽田空港で免税店の運営を行っています。入社後は、まずは販売職に就きます。今年の採用は15人の内定者で、全員女性でした。男子学生をもう少し取れたら良いとは思いますが、選考プロセスを経て、双方が「良いな」と思えた結果であるので、無理に男子を採用しようとは考えません。

 

――JAL-DFSの仕事は「空港の免税店での販売」と特徴的でわかりやすいですね。学生のみなさんもしっかりとイメージを持って、面接に臨まれていますか?

 

泉水 WEBサイトに「免税店での販売」ということをしっかり掲載しているので、どこで何をする仕事かをわかって就職を進めているケースが多く、説明会にきてギャップを受けることは少ないようです。本人のイメージと実際に働いた時のギャップをなくせるよう、面接でも話をしています。ですので、入って数か月でやめるなどの離職者はもう何年も見ていません。最近の学生のみなさんは、海外旅行が身近にあるのでいろいろな国に行ったり留学経験があったりする方も多く、免税店の存在も知っています。一昔前は、「海外に行ったことはないけれど空港で働くのは楽しそう。免税店ってどんなところだろう?」という学生の方も一定数いましたので、変化を感じています。

 

――どのような志望動機が多いのでしょうか?

 

泉水 語学に興味を持っていて、空港で働きたいという志望動機が一番多いです。空港の中でもグランドスタッフやCA、カーゴなど業務は幅広いのですが、その中でもオフィスワークではなく、接客して海外の人とコミュニケーションをとりたいという点を志望動機にする学生の方も多いです。実際に店舗を利用してくれたという学生の方もいて、「お店の印象はどうでしたか?」など、感想を聞いてみたりしています。あと「改善点は?」とも(笑)。

 

――まさに面接は「対話」の機会ですね。

 

泉水 面接時の学生からの質問も変わってきている気がします。これまでは、「実際に働くまでに何を準備すればいいですか?」や「教育制度はこう書いてあったけど、実際はどんなことをするのですか?」といった具体的な質問が多かったのですが、最近は「やりがいはどのようなときに感じますか?」など、働いている面接官の価値観や考え方に踏み込む質問が増えてきています。販売職に抵抗がある人が選考に進むことはあまりないのですが、「3年後とかその先に、販売以外の道はありますか?」と聞かれることはあります。

 

 空港の免税店に実際に立ち寄ったことがある人は、いろんなブランド品に囲まれたお店に出発前の高揚感のあるお客さんとして来店しています。利用客として見ていた視点と気持ちがミックスされ、「免税店っていいな」というざっくりとしたイメージだと思います。学生のみなさんがJAL-DFSの仕事のイメージとして使うワードは「キラキラしている」(笑)。もちろん、物理的に見えているものは華やかです。ただし、商品が売れたら補充をしなければなりませんし、お客様を出迎えるための準備や、必要な知識を習得するなどいろいろと見えない苦労があります。面接で「免税店で働くってどんなイメージがありますか?」と聞くのですが、華やかさの裏には自分なりの努力が必要だということを、面接の場を通じて説明しています。

 

――面接の場での「対話」を通じて、採用ギャップを無くされているのですね。続いて採用後のお話について伺います。内定者の社会に出る前と後のギャップを埋める教材としてフレッシャーズ・コースをご利用されていますが、コミュニケーション・ペーパーを大変ユニークな形で活用されていると伺いました。

 

 1巻ごとにコミュニケーション・ペーパーの内容を編集し、冊子にして内定者にフィードバックをしています。どこかに必ず自分のコメントが(名前は記載されず)抜粋されているようになっています。それを読むことで、同期が大勢いるけどいろいろな考え方を持っているんだな、ということを知ることができます。

 

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 この冊子とフィードバックを通じて、気づきを持ってもらいたいと考えています。例えば、「同じことを他の人はどのように表現していると思いますか?」のように、他人のコメントから気づきを誘発するような問いかけもしています。自分の解答を読み返すことはもちろん重要ですが、他の人の解答を読んでみると、「そういう考え方もあるんだ」という発見や「この人の書き方読みやすいな」と意識できるなど、いろいろな気づきが得られる、そんなフィードバックを心がけています。

 

泉水 内定者には専門学校生も大学生もいて年齢の差もありますが、入社してからも一番良い刺激をもらい合う関係になるので、まずは紙面を通じて「同期にこんなしっかり書ける人もいるんだ」と知ることも大切な気づきだと思っています。

 

――人事担当者と内定者、内定者同士、面接時や内定者フォロー期間を通じて、多くのつながりと気づきを得て、入社式を迎えられそうですね。

 

 会社が出す課題は堅苦しくて、文字ばかりのレポートみたいなものが来るのだろうと思われがちです。ですので「一回手に取ってみようかな」と思ってもらえるようなビジュアル要素を入れることで、興味を持ってもらいたいです。「読み物として楽そう」など、目から入る印象は大切だと思います。その分すごく手間はかかりますが(笑)。入社後、現場で販売研修をする際に「今度入る新入社員はこういうコメントを書いているんですよ」と、店長や現場のチーフとも共有したり、入社半年後の振返り研修にも活用しています。現場の社員と新入社員をつなぐことは、人事の大切な仕事だと思っています。課題をやる方も見る方も何かを得られることで、よりコミュニケーション・ペーパーを活かせるのではないでしょうか。人事として、プラスアルファでどんな活用ができるかを今後も考えていきたいと思っています。

 

――本日のお話を伺い、お二人の「こだわり」が内定者への「想い」であることが特に印象的でした。入社後ギャップを生まない採用ができていることも納得でした。本日は貴重なお話をありがとうございました。