大好評をいただいている「人を育てる科学セミナー」も、今年でなんと5年目。もはや人材育成担当者のバイブル的存在となっている『企業内人材育成入門』(ダイヤモンド社)の著者である、中原淳・東京大学大学総合教育センター准教授、北村士朗・熊本大学大学院准教授を講師に迎え、企業内人材育成に関する諸理論、最新の学術的研究成果を学びました。

本セミナーでは、企業内人材育成を考えるうえで押さえておきたい基本的な知識を得ると同時に、グループディスカッションなどを交えたワークショップを通して、各自が所属する組織、職場の人材育成や能力開発の「あり方」や「やり方」を見直すことを目的としています。参加者は人事・教育担当者、マネジャーの方々約50名。なかには毎年、参加者を送り込んでくださる企業もあります。まずは、テーブル毎に自己紹介から。参加者同士、話し合う機会が多いのも、このセミナーの特徴です。
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午前の部は、中原先生が担当。「なぜ今、人材育成が経営課題になるのか」では、職場で人が育たなくなった、OJTが機能しなくなった、と言われる社会的な背景として、「職場変化仮説」と「失敗不許容仮説」を紹介。

 

 「現場で人が育つメカニズム」については、人材開発の理論系を「経験系」「ピープル系」と2つに分けて解説。「経験学習」「内省」「職場における他者からの支援」、さらには「中途採用者の適応」など、押さえておきたい諸理論から最新の知見まで、中原先生が分かりやすくレクチャー。グループディスカッションやレゴを使ったワークショップでは、参加者は自社の人材育成の課題について振り返りました。
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ランチタイムは、別会場でのネットワークパーティ。参加者同士や講師との交流の場となりました。他社の人材育成担当者とのネットワークづくりもこのセミナーの目的のひとつです。

 

午後の部は北村先生による「職場での人材育成を見直す」。“機能しなくなった”と言われるようになって久しい職場でのOJT。北村先生は、OJTに関するよくある“誤解”が、そうした事態を招いているのではないか、と指摘します。その誤解とは…

・OJTは誰かが手取り足取り教えることだ
・マネジャーの仕事は業績を上げることと、OJTによる部下育成だ
・OJTは人材育成の重要な手段。だから、人材育成部門はOJTを現場に依頼するのだ

一見、どれも誤りのように思えませんが…、北村先生は「OJT、あるいは人材育成に関するこうした思い込みを変えることが大切だ」と説きます。そして、人事・人材育成部門にできることについて、

1、人事制度を整備する
2、マネジャーに部下育成について理解してもらう
3、部下の周りに支援関係をつくらせる
4、マネジャー自身に、定期的に自分のマネジメントを振り返る機会をつくる

の4項目を提案。一つ一つについて、関連する学習理論と、理論に基づいたOJTの進め方を紹介。「ストレッチ&フィードバック」「熟達の5段階モデル」「ARCS動機づけモデル」「シェイピング」「認知的徒弟制」「経験学習モデル」などなど、本を読むだけではなかなか理解できない理論も事例を織り交ぜてわかりやすく解説。折々にはさみこまれたディスカッションでは、参加者は、職場での人材育成の課題について、また、自社の人材育成のあり方について話し合いました。

人材育成上の課題は、若手育成からマネジャー育成まで、あるいは、部門間連携や中途採用者の問題まで様々なものがあります。人材育成についての学術的な理論背景を知ることは、そうした課題について考える際、問題を整理し、解決の糸口を探るための大きな助けになります。また、ワークショップやグループディスカッションを通して、他社の状況を知ることは、自社の人材育成を改めて振り返って考える良い機会となります。ご参加くださった方々からは、次のような声をいただきました。

●OJTについて、新しい考えをインプットでき、また考えるきっかけが得られた。
● 「人材育成」は単独であるものではなく、業績向上の延長であるということが目からウロコでした。
● 「考える」ことから「学ばせる」という、意識変化の必要性について気づきがありました。
● 「若手社員、新入社員をどう育成するか」という視点に対して、マネジャーの存在の大きさを改めて認識することができました。現場での学び、連携を見つめ直したいと思います。
●OJTに対する実践の方法、プロセスがあることを理解できた。
●教える側が「学べる環境づくり」を意識しなければいけないことや、仕事に対する意味づけ、また、フォロー、内省の時間をとらせるなどの工夫をすれば、その後の結果が違ってくるということがわかった。
●現場マネジャーへの仕事のまかせ方のヒントがわかりました。
●他の人事の方のお話しや他社の取組みが聞けてよかった。また、グループのメンバーとの意見交換では、考えを深めることができた。
●弊社の人材育成を企画立案するにあたってのヒントをたくさん得ることができました。