2016年10月12日

日本最大級の人事フォーラムHRサミット2016に出展! 東京大学准教授 中原淳先生がご講演

 

ダイヤモンド社人材開発編集部は10月4日(火)~6日(木)まで日本橋で行われた日本最大級の人事フォーラムHRサミット2016に出展。東京大学大学総合教育研究センター准教授 中原淳氏が「グローバル人材育成」をテーマとした講演を、ダイヤモンド社人材開発編集部部長 永田正樹が「OJT」に関する講演を行いました。

 

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10月4日(火)16時25分より、特大会場にて行われたのは「グローバル人材育成を考える それは何で、どのように実現するか?」と題する中原淳氏の講演。内需が縮小し、海外市場への依存が増えている日本において、いかに海外でも活躍できるビジネスパーソンを育成するかは、多くの企業が抱える課題です。

 

冒頭で、中原氏が最初に問いかけたのは、そもそも「グローバル人材育成とはなにか」です。実はグローバル人材の定義が曖昧になっているケースが多く、そのために「グローバル人材育成に関する誤解」が数々の「グローバル風研修」を生み出していると指摘します。

 

「グローバル人材育成に関する誤解」とは、たとえば、

①語学研修だけやればいい、という誤解

②外国に派遣し文化に浸ってくればよい、という誤解

③ストレスに強いタフな人材を育成すればよい、という誤解

 

などです。このように、なんとなくグローバルを連想させるものをコンテンツにした研修を行えばよい、といった誤解のもと「グローバル風研修」が行われ、その効果が中途半端なものになっているケースも多いようです。これを立て直すためには、まず「グローバル人材育成の定義とはなにか?」を知る必要がある、と中原氏は話します。

 

アカデミックな領域ではグローバル人材育成を、「海外でも活躍できる人材を生み出すために、採用、初期育成、フィードバックと渡航準備、渡航、帰任といった全人事プロセスを見直し、実行すること」と定義しています。この定義によれば、語学を学ぶ、文化に接する、タフネスを身につける、といったものは、グローバル人材育成の本質ではなく、育成プロセスのごく一部でしかないということが分かります。

 

では、海外で活躍できる人とはいったいどのような人材なのでしょうか?東京大学中原研究室×ダイヤモンド社の共同研究により行われた「海外派遣者トレース調査」では、5年という長い年月をかけて21社大手企業の調査対象企業の、海外赴任者を赴任前-赴任後をトレースしていき、その要件を明らかにしました。その結果から、明らかになったのが、15要因によって定義される「海外活躍力」です。大まかに説明すると「海外活躍力」とは、「異文化対応力」「伝導力」「基本仕事力」によって構成されることが分かりました。なお、ダイヤモンド社ではこの調査結果をもとに、「海外活躍力」をはかるグローバル人材診断プログラムD-GATEを開発しています。

 

では、「採用」「初期育成」「渡航準備」「渡航」「帰任」というそれぞれのステージにおいて、「海外活躍力」の高い人材を育成するために、どのようなことができるのでしょうか。ここではポイントに絞ってお伝えします。

 

【採用】

・海外で働きたいというモチベーションがあるのかどうかを見極める

・留学経験があるかどうかよりも、大学生活を通して、身近にどれだけ外国人と接する機会があったかどうかが重要

【初期育成】

・海外で活躍するためには、語学力の前に仕事力が重要。そのためには、ストレッチ経験、内省、持論化といった、経験学習理論に基づく人材育成が基本となる

・想定外の出来事の起こる海外赴任先では、経験を振り返る機会を持つなど、経験学習行動が極めて重要

・また、海外赴任では自分の業務経験、ノウハウを教えることが武器になるため、経験を語る力が重要

【渡航準備】

・海外赴任は多くの場合、突然内示が出て、ごく短期間で準備することになる。少しでも早く内示を出し、少しでも長い準備期間をとれるようにする方がよい。

・気をつけたいのが、「実務担当者気枯れモデル」。採用、新入社員時代は「グローバル人材」「海外赴任もある」との意識づけが強くされていたにもかかわらず、実務担当者時代には、一切そうした意識づけがなく、モチベーションを喪失しかけたところで突然海外異動となってしまう。これに対しては実務担当者時代にきちんと意識づけをすることが求められる。その際は、「海外活躍力」をはかるグローバル人材診断プログラムD-GATEも活用可能。

【渡航】

海外赴任中は、

①自分の経験を語れるようにしておく

②配偶者の支援もできれば行う

③海外赴任経験者からの支援、助けになる人脈を早くつくる

といったことが、成功のカギとなる。

【帰任】

・多くの人が海外帰任後、一度は中立圏(宙ぶらりんの状態)に陥ってしまう。その後、組織に再適応できないと、離職する可能性もある。

・帰任後の離職を防ぐ取り組みが必要。帰任者は将来のリーダー候補として大切に処遇するべき。

 

中原氏は「グローバル人材育成は、これからの日本にとっても重要なテーマです。どうか、『グローバル風研修』に陥ることなく、グローバル人材育成を、採用、初期育成、渡航準備、渡航、帰任といった人事プロセス全体で捉えて見直しを行い、実行していっていただきたい」と結びました。

 

一方、10月4日(火)12時35分からは、ダイヤモンド社人材開発編集部部長 永田正樹による講演「科学的OJTのすすめ~OJTトレーナー1万人のデータから見た指導の実態」と題する講演が行われました。

講演では最初に、人材育成能力の高い社員の指導方法を明らかにした研究成果に基づいて開発されたダイヤモンド社のOJT診断システムDLLについて、概要を説明。そのうえで、この診断システムが運用される中で得られた、OJT指導者にまつわる知見が紹介されました。

 

たとえば、

・新入社員に対するOJTでは「目標設定」「計画立案」ができていないことが多く、「新入社員に対しては長期目標の伝え方を丁寧に行う、目標を見える化するなどの工夫が必要」ということが分かった。

・一方、2年目以降の社員に対するOJTは「評価」「学びの抽出」が低く、「2年目以降の社員に対しては振り返りを促す指導が必要」といったことが分かった。

・男性よりは女性の方が、「評価」「学びの抽出」が高く、ほめる、労をねぎらうなど、女性指導員の方が細やかな指導を行っていることが効果を上げているらしいことも分かった。

こうしたデータから導かれる知見を参考にして、科学的にOJT指導方法の改善を行っていくことが、非常に有意義であると話し、「OJT診断システムDLLを効果的に活用して、人が育つ現場づくりに生かしてほしい」と締めくくりました。