2月25日(水)19時より、丸の内の「遊学堂」ビジネスエアポート東京で、長年企業の採用活動に携わる、ぐるなび田中潤氏が日本の採用について“ゆるく語る”トークイベントを行いました。司会はリクルートでリクナビ事業に携わった経験もある秋山進氏。このイベントはダイヤモンド・オンライン「経営×人事」の人気連載「採用は愛とマーケティング」のLIVE版として企画されたものです。平日の夜にも関わらず多くの企業採用担当者や大学関係者らが集まり、田中氏のトークに耳を傾けました。

<採用の時期論を超えて>
田中氏はまず、採用時期の変更により、大きく揺らいでいる採用市場の現状に触れ、その問題点を指摘。2016採用より、採用活動の開始時期が大学3年生の12月から3月に、選考開始は4年生の4月から8か月に後ろ倒しとなり、現在、採用市場は混乱を極めています。
しかし、このように「時期さえ変えれば、採用も変わるはず」と、採用時期のみをコントロールする「就職協定」の歴史を踏襲するだけでは、
・新卒一括採用の維持
・母集団管理の採用思想
・面接重視の採用手法
といったやり方とその問題点については手つかずのまま残され、学生の就職活動は年々、熾烈なものとなり、就活不安、就職うつ、最悪は就活自殺…につながるケースも報告されていると、田中氏は話します。

田中氏は今、盛んに交わされている新卒採用論議が“ダメな理由”として、
① 時期論の問題 時期をずらすことでなにかが抜本的に解決、改善されるのか?
② ひとごと批判の問題 企業が大学を、大学が企業を批判、自ら傷つかない立場から、とにかく批判ばかりしていないか?
③ 俺の頃は議論の問題 誰もが就職活動を経験してきたため、自分たちの時代をベースに語りがち。実は今でも1年、1年違う現実をきちんと理解しているか?
という3点を挙げます。そして、「我々は本気で採用活動をしているだろうか?自ら発信できる人材が欲しい…と言いながら、一方的に会社説明してないか?新しい価値を生むイノベーティブな人材がほしい…と言いながら、横並びの採用活動していないか?」と問いかけます。

<変わりつつある採用>
一方で、「変化の兆しは表れている」と田中氏は語ります。一部の企業では「ハードルを適切に挙げることで母集団の質、量ともに最適化する」「マス採用ではリーチできない層を採りにいく」「採用活動を通じた企業のブランドアップをする」など、新しい試みも始まっています。

また、今まで通りの横並びの採用を行っていては優秀な人材を確保できない、という危機感から、インターンシップにより、事実上「前倒し化」したり、採用活動と表立って見せない形での採用活動を行う「アングラ化」、インターンシップ、リクルーターなど、採用方法に様々なルートを設ける「マルチルート化」が進んでいる現状もあるようです。

こうした多様な採用のあり方に、就活生からは「就活のルールがわからない」「どうしたら通るのかわからない」…といった困惑、不満の声も聞こえてきます。しかし、田中氏は「本来、社会人とはそういうもの。営業で、取引先の社長からハンコをもらうための、ルールや正解はありませんよね」と喝破。そういう意味では、今後は学生から社会人へのトランジション、マインドセットが重要になってくるのではないかと指摘します。

「しばしば『大学は社会への入り口か出口か?』という議論がされます。1981年、18歳の自分には大学は社会への入り口だと感じられました。ですが今、多くの大学は、シラバスからキャリア支援まできちんと管理され高校化。大学は社会への出口となってきたように思います。また、仕事自体も定型から非定型など、パラダイムが変わってきており、企業が学生に求めるものも複雑化してきています。こうしたことから、大学から企業へのハードルが以前よりも高くなっているように思います。そのため、新卒採用は、大学から社会への移行という問題と切り離して考えることができなくなっているのです」

また、最近の大学生の傾向として、「問題解決症候群」という指摘もされており、これからは、大学から社会への移行に伴う「曖昧さ」「理不尽さ」「多様性」という壁を、大学時代に意図的に経験するような機会を設けてもいいのかもしれない、と話しました。

<今、人事ができることは?>
田中氏は、大きな変革期を迎えつつある最近の採用活動を見ていて、4つの変化のうねりを感じていると言います。
① 連帯する、連携する 企業同士の連帯、企業と大学の連携が進んできた。
② 育てる、見守る 就職活動中にも学生は成長する。就職活動の前半と後半では、同じ学生も変わっていく。そこで面接時にも、なるべくフィードバックするようにしている。大学生1,2年生にキャリア指導をする会社もある。
③ 必要な人を必要な時に 中途採用を中心に「2週間以内に、こんなスペックの人がほしい」といった非常に具体的なニーズが人事に寄せられることが増えた。このことと新卒採用がどう絡んでくるか。
④ 介在価値強化の必要性 現場で直接採用をする企業も増えてきた。「人事が採用した方が、いい人材がスピーディに採用できる」という人事の介在価値を提供しないと人事の存在価値がなくなってしまう。特に、新卒採用における人事の介在価値は、育ててお届けするところだと考えている。採用だけではなく、育てて送り出す部分が重要。

そして、採用担当者はぜひ会社という枠を超え越境してほしい、と話します。「採用という仕事で介在価値を高めるためにも、人事は外に出て、広くいろんな人と連帯して、価値を身に着けるべきです」。田中氏自身も仕事に直結する分野から趣味の分野まで様々な越境活動を通じて、多くの学び、出会いが得られたといいます。

また、新卒採用という仕事の良さとして、「新卒採用は、外に開けた仕事であり、PDCAが回る仕事であり、かつ経営に近い仕事でもあり、人事のエントリー業務として最適な仕事です。担当者が大きな裁量権を握りやすいですし、仕込みの重要性と火事場の馬鹿力も必要で、仕事のスキルが身につきます。毎年、終わりがあるので、打ち上げがある仕事、というのもいいところです」と話していました。

「みなさん、新人に変われ、と言う前に、まず自分が変わっているでしょうか。まず、会社は変わっているでしょうか?新卒採用はもう変わってきています!コップの水があふれだすまであともうわずか。今こそ新卒採用に大変革を起こすチャンスです」と、締めくくりました。

その後は、参加者からの質疑応答。具体的な面接の方法から数多くの企業にエントリーしても内定が出ず、自信を無くしていく学生に対するアドバイスまで、様々な質問が出ました。ぐるなび田中潤氏らしく、美味しそうなピザやラーメンの写真が挟み込まれた楽しいプレゼンにより、硬いテーマにも関わらず、終始和やかな雰囲気のトークイベントとなりました。
>田中潤氏の連載「採用は愛とマーケティング」はこちら
(了)