「社内に育成風土を醸成したい」
経営管理本部管理部人事グループ 福山雅典氏
大手ゼネコン前田建設工業では、入社5年目までを基礎教育期間と位置づけ、彼らの成長を支援するためのOJTトレーナー制度を運用しています。しかし、トレーナーの教えることに対するモチベーション、教えるスキルはトレーナーによってバラバラで、社内に「育てる組織文化」が醸成されるまでには至っていないのが現状です。
同社では人が職場で成長するための基本を経験から学ぶことと考えています。人が経験から学ぶためには「具体的経験」を一度立ち止まって「振り返り」、 振り返りによって得た気づきから「持論化」し、経験から学んだことを「新しい状況に適応する」という4つのステップを踏む必要があります。 同社では若手社員にこのステップを踏み、経験から効果的に学ぶよう指導しています。そしてトレーナーの仕事はこのステップを若手社員が上手く踏めるように支援することと考えています。
上記のようなステップを踏み経験から学ぶことは、一般には「経験学習」と呼ばれています。 DLLがこの「経験学習」に基づき考案され、トレーナーが上記のステップが踏めるように指導できているかどうかを可視化するための診断であったことから、 DLLを活用した研修を実施することにしました。
研修※では、DLLから導き出されたトレーナーの強み弱みを元に、トレーナーの成功エピソード・失敗エピソードを事前課題として提出してもらっています。
研修当日は、以下のワークが行われました。
※研修:毎年2月に開催/1日半研修/1クラス約30名/ワークショップ形式
同社では、研修で提供された教えるスキルが、受講者の具体的なOJT行動に反映されているかどうかを検証するため、 半年後に研修を受講したトレーナーにDLLを再受検してもらいました。
結果、OJTトレーナーとして効果的なOJTを実施しているかどうかを示す指標である「総合判定」が偏差値49.0から53.4に上昇したのをはじめ、 DLLの診断項目である「目標設定」「計画立案」「計画の実行」「障害への対処」「評価」「学びの抽出」「次期目標の設定」 も概ね5ポイント前後の偏差値が上昇しました。
このことからOJTトレーナーのOJT行動の変化が確認できたので研修を今後も継続して実施し、経験学習に基づくOJT行動の普及と定着を図りたいと考えています。